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大阪地方裁判所 平成6年(ヨ)2168号 決定 1995年12月28日

債権者

高尾頼光

橋本浩樹

右債権者ら代理人弁護士

水嶋晃

町田正男

永見寿実

債務者

西日本旅客鉄道株式会社

右代表者代表取締役

井手正敬

右債務者代理人弁護士

天野実

野口大

主文

一  債権者らの本件申立てを却下する。

二  申立費用は債権者らの負担とする。

理由

第一申立て

一  債権者ら

1  債権者高尾頼光(以下「債権者高尾」という。)は、債務者大阪支社森ノ宮電車区の運転士として業務に従事する義務のないことを仮に定める。

2  債権者橋本浩樹(以下「債権者橋本」という。)は、債務者大阪支社淀川電車区の運転士(京橋派出所在勤)として業務に従事する義務のないことを仮に定める。

3  申立費用は、債務者の負担とする。

二  債務者

主文同旨

第二事案の概要

一  本件配転命令に至る経緯(争いのない事実及び疎明資料により認定できる事実)

1  債務者は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の分割・民営化が昭和六二年四月一日施行の国鉄改革法等国鉄改革関連法令に基づき実行されたことにより設立され、西日本において旅客鉄道運送を業とする株式会社として発足したものであり、本社を肩書地に、支社を金沢市、岡山市、米子市、広島市、和歌山市、福知山市、福岡市、京都市、大阪市及び神戸市に置き、社員約四万八〇〇〇名を有する(平成六年七月現在)会社である。

大阪新幹線運転所は、債務者の大阪支社内の現業機関のひとつであり、山陽新幹線の運転部門を担当する職場である。平成六年五月一日現在の所属職員は、所長一名、助役一三名、事務係一二名、運転士二七一名(退職前提休職者等を含める。)である。

2  債権者高尾は、昭和五三年四月国鉄に入社し、福岡県に所在する後藤寺機関区に配属され、昭和五七年三月一四日電車運転士となり、その後南福岡電車区に配属され、昭和五八年一月小倉運転区に配属替えされ、昭和六〇年九月国鉄の派遣に応じ、三島光産株式会社に派遣され、右派遣中に小倉運転区長の「広域異動」の勧奨に応じ、昭和六一年七月三〇日国鉄新幹線総局大阪第二運転所に配属され、同年一二月一九日大阪第二運転所所属の新幹線電気車運転士になり、その後、昭和六二年四月一日に債務者に採用され、新幹線運行本部大阪新幹線運転所の運転士として勤務し、以後同所(その後右名称は、大阪第二運転所と変更された)の新幹線の運転士として勤務してきた。

3  債権者橋本は、昭和五五年四月国鉄に入社し、佐賀県に所在する鳥栖機関区に配属され、同年一一月電気機関助士となり、昭和五九年二月一日長崎機関区に配属され、電車運転士となり、国鉄の派遣に応じ昭和六〇年七月一日から同年一二月末までの間日産自動車苅田工場に派遣された。その後、債権者橋本は、国鉄の「広域異動」に応じ、昭和六一年五月二〇日国鉄新幹線総局大阪第二運転所に勤務し、同年九月新幹線電気車運転士になり、昭和六二年四月一日債務者に採用され、新幹線運行本部大阪新幹線運転所の運転士として勤務し、以後同所運転士として勤務してきた。

4  ジェーアール西日本労働組合(以下「JR西労」という。)は、西日本旅客鉄道労働組合(以下「JR西労組」という。)に所属していた組合員約四三〇〇名により平成三年五月二三日結成された労働組合であり、下部機関として近畿地方本部など八つの地方本部を有し、上部団体である全日本鉄道労働組合総連合会に加盟している。JR西労大阪新幹線運転所分会は、JR西労近畿地方本部新幹線支部の一分会であり、大阪新幹線運転所に所属するJR西労の組合員一七一名で組織されている。なお、同運転所所属の組合員資格者は二九六名で、うちJR西労組八三名、国鉄労働組合四二名、非組合員一名(平成六年五月一日現在)である。

債権者高尾及び同橋本は、JR西労の組合員であって、JR西労大阪新幹線運転所分会に所属し、現在債権者高尾は新幹線支部執行委員であり、債権者橋本は、大阪新幹線運転所分会青婦部常任委員である。

5  債務者は、平成二年三月JR西労組等に対し、業務運営の効率化を図るために、次の内容の「新幹線乗務員の見直し」を提案した。

一六両編成の場合、車掌二名、巡視検査・応急措置業務担当の車掌一名、運転士一名、一二両編成の場合、車掌一名、巡視検査・応急措置業務担当の車掌一名、運転士一名、六両編成の場合、巡視検査・応急措置業務担当の車掌一名、運転士一名とする。

債務者は、JR西労組との交渉の結果、平成二年七月二六日次の内容の「新幹線乗務員の乗務員数に関する協定」を締結し(以下「本件新幹線乗務員数に関する協定」という。)、議事録確認をした(以下「本件議事録確認」という。)。

<1>乗務員数については、債務者提案内容とし、六両編成の場合については、暫定的に車掌業務をなす者を二名にする。

<2>車掌の検査教育終了までの間については、乗務員の需給を勘案し、現新幹線運転士(車掌教育修了者)を新幹線車掌として運用する。

その結果、運転士一名を削減することによる合理化を図り、その結果余剰となった運転士を欠員状態であった新幹線の車掌として運用することになった(<証拠略>)。

6  債務者は、平成五年一二月一四日、次の内容の「新幹線乗務員の運用について」を提案した。

<1>新幹線乗務員の取り扱いについては、関係支社において社内の需給状況を踏まえた効果的な運用を行う。

<2>在来線運転士の需給状況を勘案し、一部新幹線運転士から在来線運転士への運用を行う。

<3>新幹線車掌の需給状況を勘案し、在来線車掌からの運用を行いつつ、一部新幹線運転士を新幹線車掌に運用する。

<4>巡視検査教育終了後の六両編成の暫定的取り扱い及び支社間の助勢は解除する。

債務者は、債務者大阪支社長を通じて、平成六年五月二五日債権者高尾に対し「事前通知書」により「森ノ宮電車区運転士を命ずる(六月三日付け)」旨の、債権者橋本に対し、「事前通知書」により「淀川電車区運転士を命ずる。京橋派出所在勤を命ずる。(六月三日付け)」旨の各発令を行った(以下、債権者らの右発令を併せて「本件配転命令」という。)。

二  主張

当事者の主張の概要は、次の通りであるがその詳細は、仮処分申立書、答弁書及び各準備書面のとおりであるから、これを引用する。

1  国鉄と債権者らとの間の新幹線運転士としての職種の制限をする旨の合意について。

(一) 債権者ら

内閣は、昭和六一年二月二八日、国鉄分割民営化関連五法案を閣議決定し、国鉄の分割民営化を推進していくことを決定した。国鉄は、同年三月四日、分割・民営化をスムーズに進めるために、主として北海道、九州などの職員が過剰になることが予想できることから、これらの職員を首都圏、近畿圏に異動させるために、積極的に「広域異動」を提示し、債権者らも右提示に応じて、大阪に広域異動したものである。その際、国鉄と動労は、同年三月一四日「広域異動の実施に関する了解事項」と「議事録確認」を締結し、その中で「異動先における将来の配属に関しての希望は可能な限り優先的に配慮する」ことを確認して、職種の限定の合意をした。債権者らも右確認に基づいて広域異動に応じたものである。

2  債務者の前記合意の承継について。

(一) 債権者らの主張

内閣は、国鉄の分割・民営化を決定し、国鉄分割民営化関連五法案を閣議決定し、法案成立後債務者を新事業体として発足することを予定していたものであるから、前記協約中の「将来の配属」とは債務者における配属を予定していたものである。

国鉄は、国鉄改革法により発足した承継法人である債務者などの設立委員に対し、右了解事項を伝達し、遵守させる義務を負っていたものであり、債務者は、前記了解事項の遵守義務を承継したものである。

(二) 債務者の反論

債務者は、国鉄改革法により新たに成立した会社であって、債権者らを国鉄改革法二三条に基づき新たに採用したものであり、前記「了解事項」は、国鉄改革法一九条ないし二三条に基づく運輸大臣が認可した「承継計画」により承継される事項となっていないのであるから、債務者に承継されていない。

3  債権者らと債務者との間での職種限定の合意について。

(一) 債権者ら

債務者は、平成二年三月、JR西労組に対し業務運営の効率化を図るとして「新幹線乗務員の見直し」を提案し、同年七月二六日JR西労組と本件新幹線乗務員数に関する協定を締結し、同時に本件議事録確認をした。

その際、債務者は、JR西労組とは、車掌の検査教育修了後においても、余力のある運転士の活用策として、新幹線内の車掌として運用する(いわゆる新幹線クローズ。以下「新幹線クローズ」という。)を確認し、車掌の巡視検査教育終了期間経過後においても、新幹線運転士が新幹線の車掌業務を行うことを合意した。

JR西労は、結成後平成三年六月一〇日債務者と労働協約を締結し、その中で、組合結成以前に既存の労働組合との間で締結された協定についてはこれを準用することを確認し、本件新幹線乗務員数に関する協定及び本件議事録確認と同一の内容の協定を締結した。

4  本件新幹線乗務員数に関する協定の破棄または失効について。

(一) 債務者

JR西労結成後、債務者との間の平成三年六月一〇日労働協約の締結に関して、従来債務者とJR西労組との合意内容についてもそのまま準用することとし、労働協約にその旨規定していた。しかし、平成五年一〇月一日に締結した労働協約には、JR西労組との労働協約を準用する旨の規定を削除したことから、本件新幹線乗務員数に関する協定は平成五年九月三〇日の経過をもって失効したものである。

(二) 債権者ら

本件新幹線乗務員数に関する協定は期限の定めのないものであり、債務者から、書面によりJR西労に対し、右協定の解除の申出がなされたこともないのであるから、右協定は現在も効力を有するものである。

5  本件配転命令は、人事権の濫用であるのか否かについて。

(一) 債務者の主張

使用者は、業務上の必要に応じその裁量で労働者の勤務場所を決定することができる。その業務上の必要性とは、労働力の適正配置、業務の能率推進、労働者の能力開発、勤労意欲の高揚、業務運営の円滑化などの企業の合理的運営に寄与する点が認められる限り、肯定される。

大阪新幹線運転所においては、平成二年一〇月新幹線乗務員の乗務基準を変更し、運転士二名の乗務を一名にする体制に変更するとともに、従来運転士が行っていた車両の巡視検査及び応急処置業務を車掌が行うこととした。これに伴い運転士の余剰が発生したが、車掌に対する巡視検査及び応急処置業務の教育の必要性等から、車掌乗務として運用してきた。

平成六年四月一七日をもってこの教育が終了することになり、同運転所には運転士に約一一〇名もの余力が発生することになった。他方、同年九月四日から実施する関西国際空港のアクセス輸送に必要な在来線運転の要員は六〇ないし八〇名と予測されていた。これに対し、平成六年四月一日時点の要員需給状況は、五電車区全体で約二〇名しか余裕がなく、関係する大阪・京都・神戸の三支社において業務量調整を実施して乗務員の効率化を図り、かつ新規養成中の運転士を登用するなどしても、なお二〇名程度不足する見込みであった。このような状況において新規に在来線運転士を養成するには最低九か月強の期間を要するために、大阪新幹線運転所から在来線運転士の免許を有する新幹線運転士を選抜し、在来線運転士として運用することとしたものであり、本件配転命令は、債務者における労働力の適正配置及び業務運営の効率化・円滑化という企業の合理化に寄与するものであり、業務上の必要性に基づくものである。

そのために、大阪新幹線運転所の新幹線運転士の選抜の基準として<1>在来線のEC免許を有していること<2>若年者から順次選定すること<3>在来線の勤務経験が一年以上あることとした。

大阪新幹線運転所においては在来線運転士の免許をもっている運転士は、五九名存在し、その中から本人の適性、能力等を勘案して二三名を選抜したものであり、そのうち二〇名がJR西労の組合員であるが、そもそも五九名のうちJR西労の組合員が五六名であったための当然の結果である。

(二) 債権者らの反論

(1) 債務者においては、社員の配転は就業規則上「会社が業務の必要性がある場合は、社員の転勤、転職等を命ずる(二八条一項)」と規定され、「社員に配転を命ずるためには、業務上の必要」が要求されている。

本件配転命令は、従来の人事運用に関する合意に反するものである。

新幹線運転士は、債務者の発足時には、新幹線運行本部の統括のもとに新大阪―博多間の新幹線内で運用され、その後、同運行本部廃止後も新幹線内で運用されてきたものである。

在来線に関しては、債務者発足後の平成五年三月まで近畿圏は本社鉄道本部(直轄)管轄の人事運用がなされ、同年三月右鉄道本部(直轄)が大阪支社、京都支社及び神戸支社に三分割された後も、債務者は組合に対し人事に関しては右三支社一本で運用すると明言してきた。

三支社一本で人事を考えた場合、在来線運転士の過員の状況及び新規養成の状況を考慮すれば、関西国際空港アクセス輸送の要員は十分足りるものである。

(2) 債務者は、新幹線運転士が過剰であるといいながら、平成五年から大卒及び高専卒者を本社採用して新幹線運転士として養成している。この中には、在来線の運転士養成もかねて、在来線免許を取得している者もおり、これらを考慮に入れれば、債権者ら従来の新幹線運転士を配転させる必要性はない。

(3) 新幹線運転士は、平成二年の一人乗務制により余裕が生じたが、組合との合意によりこれらを新幹線内の車掌として運用することになった当時、債務者は、資料を示して、平成七年四月には新幹線運転士と車掌のトータルでの過欠はほとんど等しいものになることを予測し、実際そのような状態になっている。これをみても、新幹線部内では運転士の車掌への運用によりスムーズな活用策がなされていたのであって、これを無視した運転方式の全く異なる在来線運転士へ運用する必要性など全くない。

(4) 債権者らにとっては不利益な処分である。

新幹線と在来線とでは、その運転方式が全く異なる。また運転保安方式、社内設備、規程等も全く異なる。運転士の養成は、在来線運転士を新幹線運転士に転換する方法でなされてきたが、これは低速から高速のほうに訓練していくことが、人間の特性、安全上適切であると判断されたからである。しかも、新幹線から在来線の運転士になるための教育をしたとしても、従来の経験及び勘等を一切無視しなければならず、その精神的・肉体的な負担は多大なものである。

また、在来線の運転士の方が新幹線運転士に比べ労働時間も長い。

6  不当労働行為の意思に基づく配転命令について。

(一) 債権者ら

本件配転命令は、債務者が「新幹線運転士は新幹線内で運用する」、「乗務員は将来にわたり乗務員」という枠を一方的に取り払い、人事運用の名のもとに社員を自由自在に配転等できる体制をつくるためのものである。今回の配転は、待ち合わせ時間=労働時間制を廃止し勤務制度に反対しストライキ闘争などを行ったJR西労の拠点職場を破壊するために計画されたものにほかならない。

また、債務者は、JR西労の組合員に対し、現場管理者により執拗な脱退慫慂を繰り返していた。債務者は債権者らを含む大阪新幹線運転所の運転士二三名を在来線運転士に配転したが、右配転命令を受けた運転士のうち二〇名がJR西労の組合員である。このことは、債務者は、まさにストライキをしたJR西労を嫌悪してJR西労組合員を重点的に差別して配転したものである。

7  債権者らの本件配転命令に対する同意の必要性について

債権者ら

債務者は、今回の配転に関して、甲種電気車免許保持者であることを重視しているが、同免許取得は、運転士らが債務者の設立に際して個人の負担において取得したものであり、債権者らの意思に反してこれを選抜の基準とすることは権利の濫用である。

8  保全の必要性について。

(一) 債権者ら

新幹線運転士としての専門職の特殊性からして、長期間現場を離れることは技術的低下のおそれが著しく、しかも長年にわたり在来線の運転を行わなかった者にとっては、在来線の運転の教育訓練は多大な肉体的、精神的不利益を受けるものである。

三  争点

1  国鉄と債権者らとの間で、新幹線運転士としての職種の制限をする旨の合意がなされていたのか否か。

2  債務者は、国鉄の債権者らに対する右合意を承継したのか否か。

3  債務者が新幹線運転士を二名から一名乗務制に変更する際に、JR西労は、債務者との間で新幹線クローズの合意をなしたのか否か。

4  新幹線職種限定に関する労働協定は、有効に存在するのか、破棄されたのか。失効したものか否か。

5  本件配転命令は、人事権の濫用に当たるのか否か。

(一) 本件配転命令は、配転の必要性がないのか否か。

(二) JR西労に対する不当労働行為の意思に基づいてなされたものであるのか否か。

(三) 本件配転命令には債権者らの同意が必要か否か。

6  保全の必要性があるのか否か。

第三当裁判所の判断

一  争点1について(国鉄と債権者らとの職種限定の合意の存在)

1  配転による労働内容の変更は、労働者の法的権利関係を変更するものである以上、原則としては労働者の同意がいるが、当事者の合意の範囲内と認められる限りは労働者の個別的、具体的な同意がなくとも、使用者は労働契約により取得する指揮命令権に基づいて配転を命じ得る。

そこで、債権者らが国鉄との間で職種限定の合意をなしたか否か検討する。

(一) 内閣は、多額の赤字を抱えて経営が破綻状態であったため、その再建を模索中であった。

内閣は、昭和六一年二月二八日、国鉄分割民営化関連五法案を閣議決定し、国鉄の分割民営化を推進していくことを決定した。国鉄は、同年三月四日分割・民営化をスムーズに進めるために、主として北海道、九州などの職員が過剰になることが予想できることから、これらの職員を首都圏、近畿圏に異動させるために、積極的に「広域異動」を提示し、債権者らをも含む多くの職員は右提示に応じて、大阪や東京などの広域異動に応じた。その際、国鉄と動労は、同年三月一四日「広域異動の実施に関する了解事項」を締結し「議事録確認」をし、その中で「異動先における将来の配属に際しての希望は可能な限り優先的に配慮する」ことを確認した(争いのない事実)。

国鉄改革法など改革関連法が昭和六二年四月一日から施行され、国鉄清算事業団を設立し、国鉄の承継法人として債務者が設立された。国鉄の承継法人は、国鉄から承継する事業等について、運輸大臣が決めた「基本計画」に基づいて、国鉄が作成した「承継計画」に定められた事項を承継した(日本国有鉄道改革法一九条ないし二二条)。

職員については、承継法人は、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用基準を提示して職員の募集を行い(同法二三条)、国鉄は、承継法人別にその職員となるべき者を選定し、その名簿を作成して設立委員等に提出し、右名簿に記載された職員のうち、設立委員等から採用する旨の通知を受けたものは、承継法人の職員となることから、債務者は、右規定に基づき債権者らを採用した。

(二) 債権者らが職種限定合意の存在の根拠として掲げる「広域異動の実施に関する了解事項」による「広域異動の実施に関する了解事項は、異動先における将来の配属にさし(ママ)ての希望は可能な限り優先的に配慮する」とか、「議事録確認」による「将来の配属に関する本人の希望については、国鉄として可能な限り優先的に配慮する」と記載されている文言(<証拠略>)からは、国鉄と債権者らとの間で職種限定の合意があったことは認めがたい。

国鉄の承継に関する法律によれば、承継法人は、国鉄から承継する事項については、運輸大臣が認可した「承継計画」中に記載されたものについて承継されると規定されており、債権者らと国鉄との職種限定の合意は、職員の労働条件にとって重大な事項であり、国鉄が債務者に同合意を承継させようと考えるならば、当然「承継計画」に含まれてしかるべきであるにもかかわらず、そのような事項は「承継計画」中には認めることはできない。

むしろ、前記(一)の認定事実及び承継事項に関する法律の規定の内容からすれば、右了解事項及び議事録確認によって認められる国鉄の職員に対する義務は、承継法人が承継した国鉄の業務を円滑にするために、国鉄が承継法人の職員採用に際して配慮すべきことを義務付けたものに過ぎないと解するべきである。

(三) なお、債権者らは、職種限定の合意があったからこそ、債権者ら広域異動者は債務者との雇用契約締結の際に第一希望のみ書くだけで足り、第一希望どおり配転されたものである旨主張する。

しかし、採用に際する債務者の債権者らに対する右取扱いは、国鉄の同職員に対する前記了解事項及び議事録確認が国鉄に対し努力義務を課したものであることからすれば、国鉄としてできる限り債務者に対し、職員の意向に沿った採用を働きかけるべきものであること、債務者としては国鉄の事業の円滑な承継を図ることが重視されていた経緯から、国鉄が債権者らに対し第一希望のみを記載させ、債務者がその希望どおり採用したものにすぎないのであって、右義務が職種限定の合意でないことと矛盾するものではない。

(四) 債権者らはさらに、債務者に雇用されるに際して動力操縦者運転免許が必要になったが、債務者は、債権者らが新幹線運転士となることから新幹線運転士の免許のみ必要であるとして、甲種電気車運転免許については債務者には一切関係ない・不要なものとして処理したために、債権者らは、自己の負担で自己のために右免許を取得したものであり、このような債務者の態度は債権者らと国鉄との職種限定の合意を認めていたものである旨主張する。

しかしながら、甲種電気車運転免許は債権者らの職務にとって当面必要でなかったことから債務者において、その費用を負担しなかったものであり、そのことから、直ちに債権者らと債務者との間で職種限定の合意があったことを認めることができない。

2(ママ) 争点3について(「新幹線クローズ」の合意の有無)

債務者における就業規則によれば、「業務上の必要がある場合は、社員に転勤、転職等を命ずることができ」、「社員は正当な理由がなければこれを拒むことができない。」と規定されている。したがって、債務者においては社員の採用の際には、職種限定の合意はなされていない。

しかし、債権者らは、平成二年七月二六日締結の本件新幹線乗務員数に関する合意及び本件確認書により、JR西労組との間で新幹線の乗務員は新幹線のみにおいて使用されるものであり、在来線への配置はできない旨の「新幹線クローズ」の合意がなされ、その後、平成三年六月一〇日JR西労との間でも右合意が締結された旨主張する。

そこで、この点について、検討する。

(一) 当事者間に争いのない事実、疎明資料(<証拠略>)及び審尋の全趣旨によれば次の事実が一応認められる。

債務者においては、新幹線(新幹線(ママ)―博多間)の列車の乗務員の乗組基準は、運転士二名であったところ、平成二年三月、JR西労組に対し業務運営の効率化を図るとして「新幹線乗務員の見直し」を提案し、その内容は、一両(ママ)編成あたり運転士を一名削減することであった。債務者の右提案は、従来の運転士の検査業務を車掌業務にするという根本的な変更であったために、JR西労組等は債務者と団体交渉を繰り返していた。債務者は、平成二年一〇月一日新幹線乗務員の乗務員数を変更し、運転士の二人乗務を一人乗務に変更し、従来運転士が行っていた車両の巡視及び応急措置業務を車掌が行うこととした。

右新幹線乗務員の乗務員数の変更に伴い、新幹線運転士に余力が発生することになり、債務者とJR西労組との間で平成二年七月二六日本件新幹線乗務員数に関する協定を締結し、同時に本件議事録確認をした(<証拠略>)。

本件新幹線乗務員数に関する協定によれば、<1> 乗務員数を一六両編成の場合は、車掌三名、運転士一名、一二両編成の場合は、車掌二名、運転士一名、六両編成については車掌一名、運転士一名とする。<2> 車掌の検査教育修了までの間については、乗務員の需給を勘案し、現新幹線運転士(車掌教育修了者)を新幹線車掌として運用する。

また、議事録確認によれば、運転士の余力活動(ママ)については、今後の乗務員養成の実態や需給見込みなどを踏まえ、効果的な運用を検討していくことにし、当面は、車掌の欠員対応、特改等の効果的な運用を行っていくとされた。

(二) 債権者らは、本件新幹線乗務員数に関する協定及び本件議事録確認によって、新幹線運転士については「新幹線クローズ」という新幹線内での職種の限定の合意がなされた旨主張する。

しかし、(証拠略)によれば、平成二年六月四日になされた債務者とJR西労組との団体交渉において組合側からの「今後の新幹線要員展望と具体的に車掌の検査教育修了後に出るであろう余剰人員の取り扱いはどうなるか」という質問に対し、債務者は、「余力となる運転士については、車掌の欠員対応及び特別改札等に効果的に図って行きたい」と回答しているのみであって、新幹線内での職種に限定する旨の回答はしていない。

また、組合の「車掌全員の検査教育終了後の車掌所の所要員を明らかにするとともに早急に別途車掌の養成を行い在来線各車掌区から新幹線に車掌の転用を図られたい。」との質問に対し、債務者は「教育終了後も車掌職で若干の欠員、一方で、運転士職で余力が生じると想定されることから、これら運転士を車掌として運用していく考えであり、今後の需給状況を勘案する必要があるが、当分の間は車掌区からの運用を考えていない。」と回答している。さらに、同月二四日の団体交渉において、組合から「効率化の施策実施にあたり余剰員が発生した場合は、新幹線職場の今日までの経過と今後の将来展望を踏まえて対応されたい。」との要請に対して、債務者は「施策実施に伴い余力となる運転士については、今後の新幹線乗務員(運転士及び車掌)の需給状況を踏まえ、効果的な運用を図って行くこととするが、当面は既に説明したように車掌の欠員対応及び特別改札等に運用していくこととする。」と回答している。このように、団体交渉における債務者の組合に対する回答は常に当面は新幹線の運転士の余力人員を新幹線の車掌に当てるとするも、明確に新幹線内に限定する趣旨を表明したものはない。

JR西労組の組合員のうち新幹線運転士にとっては、新幹線内で働くという職種限定は重要な意味をもっていたものであろうことは容易に推測することができる。そうすると、債務者との団体交渉において、職種限定を確認したとするならば、明確な文言による規定が検討されたものであろうことは十分推察できる。しかしながら、その後協定された本件新幹線乗務員数に関する協定及び本件議事録確認においても、新幹線内に職種を限定する旨の明確な規定は設けられなかったものである。

さらに、JR西労組は、本件新幹線乗務員数に関する協定の締結後である平成二年八月に実施された債務者との団体交渉の場において、「西労組所属の運転士については新幹線職場で運用(新幹線の枠で運用すること)することとされたい。」旨の要求を行っている(<証拠略>)。これに対し、債務者は「提示したとおりである」と回答している。債務者とJR西労組との間で職場限定の合意がなされていたならば、本件新幹線乗務員数に関する協定の締結及び本件議事録確認後の団体交渉の場において再度右協定事項を確認する必要性は特に認めがたい。

以上、本件新幹線乗務員数に関する協定及び本件議事録確認からは、債務者は、新幹線運転士の二名乗務から一名乗務による運転士の余剰の活用については、当面は新幹線内での効果的な運用を図ることを確認したものであって、新幹線運転士を新幹線外の勤務に配転しないことを確認したとまでは解することはできない。

(三) 小田敏男は、当時JR西労組の中央執行委員であったが、同人の供述では、JR西労組は、債務者に対し団体交渉の席上新幹線運転士を在来線に配置換えすることは困る旨要望していたと述べる(<証拠略>)。

しかし、その点に関する債務者の答弁の内容については記憶がないとして答えず、また、「新幹線クローズ」の要求を団体交渉の場で正式に要請したか記憶が定かでないと答えるなど、職種限定に関することはJR西労組にとっては重大な事項にかかわらず、その部分は極めて曖昧で信用することができない(<証拠略>)。

(四) 債権者らは、JR西労組近畿地方本部も債務者と団体交渉して、右教育期間内においては、最高六カ月間の新幹線運転士のローテーション回しによる新幹線車掌業務をなすことを確認し、同年一〇月から大阪新幹線運転所所属の運転士がローテーションによる大阪西車掌所に「在勤」を命ぜられる形式にて順次六カ(ママ)月ローテーションで車掌業務をなすことになった。右ローテーション方式は、平成六年四月一七日まで実施され、大阪新幹線運転所の全運転士は、約三回のローテーションによる車掌業務を経験しているものである旨主張する。

債務者において新幹線運転士の車掌への登用は六か月ローテーションで行われていたが、このことから直ちに、債務者とJR西労組との間で右合意がなされていたものと判断することはできない。むしろ、債権者らがその根拠として掲げる(証拠略)には、「運転士の車掌への運用を教育期間中にローテーションを行う場合は、車掌の巡視検査教育計画等に支障のない範囲で行う」と記載されているのであって、右文言は、教育期間中にローテーションを行うことを言っているにすぎない。

さらに、(証拠略)には、JR西労組は、平成二年八月債務者との団体交渉において、「期間(ローテーション)最大六か月を越えないこととされたい。」との要求を行ったが、債務者は、「兼務期間については、当分の間とする。」と回答している。

仮に債権者らが主張するように、債務者とJR西労組との間で新幹線運転士が車掌として兼務する期間に関して六か月ローテーションをする旨の合意がなされたとするならば、議事録確認等において債務者がJR西労組に対し明確にその旨述べていたものと思われるが、そのような明確な記載は認めがたい。

以上からすれば、債務者の右回答内容からは、新幹線運転士が車掌として兼務する期間について六か月ローテーションを取っていたということはできない。

三  争点5について(配転命令権の権利濫用)

1  債務者の就業規則によれば、業務上の必要性がある場合には職員に配転命令ができる(<証拠略>)。そこで、債権者らの配転が業務上の必要性があるか検討する。

本件疎明資料によれば、債務者は、平成二年一〇月新幹線の乗務員の乗務員数の変更を行い、運転士を一名削減し、余剰となった運転士については車掌として巡視教育を行い、車掌に充てた。しかし、そのような努力にかかわらず、新幹線の運転士は、車掌の巡視検査及び応急措置業務の教育の実施終了時の平成六年四月一七日一一五名の余力が発生する結果となった。その後の新幹線車掌への運用等による活用を図ってもなお約五〇名もの余剰人員が発生することになった(<証拠略>)。

他方、在来線の運転士の要員需給は予想していたよりも少なかった。債務者は、平成二年段階で二ないし三年先までに在来線運転士の養成が会社全体で約三五〇名必要であり、関西国際空港開港に伴うアクセス輸送にもさらに要員が必要になると想定した(なお、平成五年ころには、景気後退により、在来線の需要がそれほど見込まれることがなくなった結果、当初予定していた約三五〇名もの増員は不要となった。)。

そこで、債務者は、極力効率的体制を作って、要員増を抑制するとともに、在来線の運転士について車掌から運転士に登用するという本来のルートからだけでなく、あらゆる系統から運転士を養成する特例募集を開始した(<証拠略>)。特例募集は平成二年及び平成三年では年各一回、平成五年には年二回実施され(<証拠略>)、平成五年度には昭和五七年以降中止していた高卒社員の新規採用を実施することにした。しかし、要員の確保は困難で、養成ラインを追加して平成四年当時年二回を平成五年一一月には年五回に増やしたが(<証拠略>)、退職前提休職制度の影響からも休職者が急増し(<証拠略>)、在来線の運転士の手当が困難であった。

関西国際空港開港は平成五年六月ころに具体化し(<証拠略>)、同年八月下旬ないし九月上旬に開港する見通しが強くなった。その結果債務者において平成六年六月段階で関西国際空港開港に伴うアクセス輸送のための要員を六〇ないし八〇名と想定したが、右確保は前記事実から困難な状態であった。また、平成六年四月当時債務者の近畿三社(大阪、神戸及び京都の支社)で合計五六名過員となり、教育及び病欠者等を考慮すると一六名の余剰となるが、大阪支社だけでは八名しか余裕がなく、新規養成の職員は約四〇名程度であるために、退職者を想定すると約二〇名程度不足することが判明した(<証拠略>)。

そこで、債務者は、平成五年一一月ないし一二月ころ、新幹線の運転士の活用を計画し、平成六年四月一八日段階で、在来線の運転士の余剰人員を過去の病気ないし教育のために勤務を離れる者の人員確保のための余剰人員が約四〇名であったことから、同人数程度は必要であり、過欠人員を一六名と想定した。一方、関西国際空港の開港に伴うアクセス輸送のために人員が約六〇ないし八〇名必要であることが想定された。そこで、債務者は、そのうち新規運転士の養成により約四〇名を見込むことができ、退職者等を見込むと、新幹線運転士から約二〇名ほどを在来線運転士へ配置換えを行えば足りると判断した。しかし、実際には、新規養成者の中には運転士としての適正(ママ)がない者もいたことから予想程人員が増えることがなく、平成六年九月段階では、新規の運転士は約一八名しか増えなかった。そのために、債務者は効率的な態勢を組んで関西国際空港のアクセス輸送のための人員増を約五三名に押さえた(<証拠略>)。

在来線の運転士は、動力車操縦者運転免許が必要である(<証拠略>)。しかし、右選定に当たっては、短期的に在来線への運転士を養成する必要から(免許保持していない者については研修が九か月、新幹線免許保持者では研修が五か月、EC免許保持者では研修が二〇七時間)、既に甲種電気車免許(EC、以下「EC免許」という。)を保有する者で養成のために柔軟に対応できる年齢を考慮してできるだけ若年者層から選定することにし、さらに在来線での運転士経験が一年未満の者を除外した(<証拠略>)。その結果、債務者は、大阪新幹線運転所所属の運転士二三名を選定した。

大阪新幹線運転所所属の新幹線運転士でEC免許保有の者は、五九名存在したが、そのうちJR西労の組合員が五六名占めていたことから(<証拠略>)、二三名中二一(ママ)名がJR西労の組合員であった(争いのない事実)。

以上の事実から、債務者の債権者らに対する本件配転命令には、業務上の必要性のあることが認められる。

2  債権者らは、所要員(運転所などの各区所においてそこの社員が年間総休日数を完全に消化したうえで当該区所の業務を正常に運営することが可能な状態をいう。)は、各現業機関毎に定められ、ダイヤ改正等の提案事項として労働組合に所要員計画表で資料提供され、運転士の場合は、業務態勢等箇所別現改比較表で指導、交番等の内勤者数が区所別業務量で定期列車の運転に必要な所要員が所要数として明示され、この所要員計画表の所要員から指導、交番、所要員数を差し引いたものが臨時列車の運転や所要数の年休取得のための要員となり、通常「予備」と呼ばれ、所要員は計算上の数値から整数に切り上げられて配置されるために、ある程度の余裕をあらかじめ含んだものとなっている。その決定に際して、運転士の有給休暇等の消化を考慮し、組合専従員、退職前提休職者、復職前提休職者及び長期病休者を除外して決定されるものであり、所要員以外に別枠で病欠者及び教育対象者を約四〇名も考慮することは不当であり、さらに右四〇名の根拠さえ具体的な事由に基づくものでもないのであるから不当である旨及び債務者は、平成六年四月時でJR西労に対し、近畿三社の在来線運転士については約五〇名の、大阪支社の在来線運転士については約二〇名もの余裕がある旨説明してきたのであり、債務者の主張の過員の数は事実に反する旨主張する。

しかしながら、(証拠略)によれば、平成六年四月ないし九月時点では、四〇名もの病欠者及び教育対象者が発生していること、右数字を否定すべき的確な疎明資料がないこと、過去において新型車両の導入による教育が実施され、そのために運転士が一時的に運転業務に従事できないことが発生していたこと(<証拠略>)及び運転士がいないと電車等の運行ができなくなり、運行スケジュールが狂うことも想定され、債務者において迅速な対応が必要とされる実態が伺えることから、それらの余剰員をも考慮することはあながち不当であるとまでは言えない。

3  なお、債権者らは、債務者が、新幹線の運転士に多数の余剰人員が発生するといいながら、大学卒業者を平成五年二月一〇名、同年三月一六日に三名、平成六年二月に九名合計二二名もの者を新規の新幹線の運転士として採用している旨非難する。しかしながら、債務者の大学卒業者の新規採用は、幹部候補制(ママ)として種々の業務に従事することとして新幹線の運転士の業務に従事させているものであり、債権者らの右批判は的確なものとはいえない(<証拠略>)。

4  債権者らは、債務者の債権者らに対する本件配転命令は、債権者らがEC免許を有することを根拠としてなされたもので、右資格は債権者らの個人的なものであるから、同意がない本件配転命令は違法である旨主張する。

しかし、債権者らが取得したEC免許は、国鉄時代に取得したものであり、その際、国鉄が業務上の必要性に基づいて取得させたものである。その後債権者らは、債務者に雇用された際に、新幹線の運転士に配置されたことからEC免許を保持する必要性がなかったので、債務者としては、あえて債権者らを拘束する必要がないことから、債権者らの意思に委ねたものであり(<証拠略>)、全く個人的に取得した資格ともいえない。したがって、債権者らのEC免許保持を理由の一つにして、配転命令を行うことは違法とはいえない。

5  不当労働行為について

債権者らは、JR西労を嫌悪し、債務者の管理者等によるJR西労の組合員の組合脱退の慫慂が行われているとして、債務者の債権者らに対する本件配置転換命令は、不当労働行為の意思に基づくものである旨主張する。

しかしながら、前記認定したとおり、債務者の債権者らに対する本件配転命令は、もっぱら業務上の必要性に基づき合理的な基準により選定された結果発令されたものというべきであり、主として不当労働行為の意思に基づくものであるとまでは認めがたいので、本件配転命令が違法となるものではない。

四  以上の次第で、債権者ら本(ママ)件仮処分の申立ては、理由がないからこれを却下することとし、相当法条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井筒宏成 裁判官 杉江佳治 裁判官 山口芳子)

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